【撮り下ろし&オリジナルインタビュー】映画『SINSIN AND THE MOUSE』監督・真壁幸紀にインタビュー「ツェン・ジンホアは品があるなかにも野性味や危うさがある」
- Manettia編集部
- 3 日前
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吉本ばなな原作『SINSIN AND THE MOUSE』(シンシン アンド ザ マウス)が、日本と台湾の合作映画として6月26日(土)公開されます。

母を亡くした女性・ちづみと、日本人の父と台湾人の母を持つ青年・シンシン。台北の街の音や人との出会いを通して、止まっていた心が少しずつ動き出していきます。
主演は岸井ゆきの、そして台湾で注目を集めるツェン・ジンホア。監督・脚本・編集を務めたのは、『ボクは坊さん。』『すくってごらん』の真壁幸紀監督。
今回は真壁監督に本作を映像化しようと思った理由、“音”へのこだわり、ツェン・ジンホアさんの魅力、そして台湾での撮影についてインタビューを行いました。
※映画の内容に触れる部分があります。

◆吉本ばななさん原作『SINSIN AND THE MOUSE』を映像化しようと思った理由を教えてください。
監督:知人から素敵な作品があると吉本ばななさんの『SINSIN AND THE MOUSE』を教えてもらったのがきっかけですね。コロナ前は、企画をもらってオファーを受け、作品を作っていました。ただ、コロナ禍に入ると企画のオファーがなくなったり、あっても先に進まなくなってしまい、自分たちで企画をするしかないと思いました。 そう思ったときに、自分は海外と一緒に映画を作りたいと思いました。コロナが落ち着いてきた頃からは、海外の映画祭やコンテンツフェスティバルなどで、自分たちで企画のピッチングをするようになりました。 その中で台湾の『TCCF』(台湾クリエイティブコンテンツフェスティバル)で出会った人に台湾のコンテンツを紹介してもらい、2023年に台湾ドラマ『CODE』を坂口健太郎さんを主演に僕がプロデューサーとしてリメイクしました。それもあり台湾と繋がりができ、「一緒に作品を作りたい」と話しているときにこの作品を教えてもらいました。
◆本を読んで映画化したいと思われたんですね。
監督:自分がやる意味があるか考えながら本を読みましたし、吉本さんの他の作品や映像化された作品も観て、吉本ばななさんがもっている哲学みたいなものを、自分が持っている哲学や信念を曲げずに、純粋な気持ちでこの作品を映画化できると感じたので企画しました。

◆ツェン・ジンホアさんには出演に関してすぐにいい返事をもらえなかったと聞いていますが、それでも諦めきれなかった監督から見た彼の魅力とは?
監督:原作を読んだときにちづみ役は岸井さんしかいないと思いました。でもシンシン役がなかなか難しくて。日本の俳優さんは違う気がするし、日本と台湾のハーフの役だから台湾の俳優がいいのか?日台ハーフがいいのか?なかなか候補が見つからないなかでジンホアさんをおすすめされて、彼の作品を観ました。作品を観て、例えば何も考えずに彼の表情を捉えたときにいろんな捉え方ができる人だなと思いました。ぜひ映画に出て欲しいなと思ってお会いしたんですが、お会いした時にもすごく好青年で品がある人だと思いました。僕は台湾作品も好きでよく観るのですが、台湾の俳優さんは皆さん品があると思います。その中でもジンホアさんは、野性味というか危うさのような部分も持っていて、表現の幅が広いと感じました。そこが魅力で、オファーをし続けました。 はっきり断られたわけではないのですが、良い返事がもらえず、なんとなく断りたいような雰囲気を感じたので、その部分を解決すればオファーを受けてくれるかと思い口説き続けましたね。
◆ツェン・ジンホアさんは日本語がまったくできなかったと聞きましたが、監督の意図は通訳者を通して伝えていたのでしょうか?
監督:そうですね。ただ、日本語の練習やセリフの練習を自分も立ち会って一緒にやってきたので、お願いしたい表現の仕方はその時点で伝わっていました。セリフを覚えるために、本当に長い期間取り組みましたね。


◆岸井ゆきのさんとツェン・ジンホアさんの組み合わせで感じた化学反応はありましたか?
監督:思ってた以上に相性が良かったと思います。何が功を奏したかというと、ジンホアさんは本当に一生懸命、日本語を勉強して練習していました。大変だったと思うのですが、その大変さを表に出さずに現場へ来て、スタッフとも積極的にコミュニケーションを取っていたんです。その姿に岸井さんも触発された部分があったと思いますし、スタッフも自然とジンホアさんのことを好きになっていきました。 何とか2人のためにいいものを撮りたいという空気になりましたね。
◆全体的にいい化学反応があったのですね。
監督:そうですね。険悪な雰囲気になることもなかったですし、ジンホアさんが日本語のセリフがうまく出てこないときもありましたが、岸井さんがずっと我慢強く付き合って、またそのことをジンホアさんも感じているので、お互いにお互いを支えあう形がシンシンとちづみのようでしたね。

◆「音」がひとつのテーマとなっていると思います。冒頭、6分30秒程セリフがありませんでしたが、監督としてどんな意図がありましたか?
監督:静かなところから台湾に行ってバイクなどの音にまみれて、心が外側に開いていき回復していくという感じを表現できればいいと思いました。音のコントラストをつけたいと思いました。 最初からセリフがあって東京の街のうるささを入れるのではなく、ちづみの心情に合わせて音をつけていったイメージです。

◆原作にはない、映画オリジナルの場面はありますか?
監督:ちづみのお母さんの動画やシンシンのお母さんのレコードを聴くところは原作にはなかったところですね。
◆セリフのない“静かな演技”がとても印象的でした。役者さんの芝居を引き出す上で、大切にしていたことはありますか?
監督:僕からは何も言ってないんですよね。ジンホアさんには日本語やセリフの練習の時にニュアンスとかは伝えていたのですが、岸井さんや他の役者さんには何も伝えずに現場入ってもらってまず演技をしてもらいました。演技をしてもらってイメージが違っていたら伝えましたが、基本的には役者さんの演技を尊重して、その演技を1番魅力的に使い伝えるためのアングルだったり照明を考えることに気を使いました。
◆スタッフの方も日本と台湾の方がいたのでしょうか?
監督:半分半分ぐらいでしたね。意思疎通をとるのは大変でした。日本人は、何も言わなくても察してくれることがあります。逆に、言葉にすると「そこまで言わなくてもいいのに」という空気になることもあります。でも台湾のスタッフとは、どんなに細かなことでもきちんと伝えることが大切だと気づかされました。
◆台湾での撮影現場ならではの空気感はありましたか?
監督:撮影現場でいうと台湾は食事をとても大切にするんですよ。日本は肉か魚の2種類のお弁当が多いんですが、台湾だと麺や餃子など5、6種類あって、食事をとても大事にしていて時間もきっちりと取ります。こういうことってすごく大切で、日本だとあと少しだから食事時間を削って進めてしまおうという感じになるんですが、そういう良い意味で緩やかな空気感みたいなのは現場からも出ていました。
◆台湾という場所についてはどう感じましたか?
監督:台湾は何度か訪れているのですが、肩肘はらなくていいというか、例えば首輪をつけてない犬がいるような、そういう空気感が心地いいんです。

◆ロケ地選びでこだわったことはありますか?
監督:原作に書いてあるロケ地で選定しようと思いつつ、なかなか難しいところもあったのですが、こだわったのは台北からは出ないという事ですね。例えばバーのシーンもどこのバーで撮影してもバーには変わりないのですが、違う空気感になってしまうと思ったんですよ。それにロケ地巡りをしたときにも「あれ?この場所台北ではない?」みたいになってしまうと思ったんですよね(笑)。
◆“観光地らしさ”を出しすぎない意図もあったのでしょうか?
監督:観光映画にはしたくないという気持ちと、シンシンはお母さんが台湾人のハーフで、その彼が紹介する場所だったので旅行誌に出てくるような場所ではないところで撮影したほうがいいと思っていました。

◆台湾ロケで印象に残ってる場所やエピソードはありますか?
監督:映画の中で2人が雨宿りをするシーンがあるんですが、雨が降ってない想定だったので本当は近くの道を選んでいたんですけど、雨が降ってきてしまったので軒先を選んで撮影しました。でもそういう時に予定していた場所ではなかったのですが、台湾は比較的すぐに撮影できてしまうんですよね。東京だと難しいことなので、そういうフレキシブルなところは、とてもやりやすかったですね。
◆映画監督という視点から見た台湾の魅力とは?
監督:古い街も残っていて、でも新しい台北101のようなところもあって、いろいろな人たちがいて、そういうところかなと思います。雑多な魅力というんですかね。路地を1本挟むとまったく違う雰囲気になる、そういう“混ざっている”ところが台湾の魅力ですね。

◆この映画を通して、観客にどんな感情を持ち帰ってほしいですか?
監督:吉本ばななさんの本が原作なので僕からメッセージを発するということはないのですが、この映画は、ちづみが1人家に閉じこもっていたところから、マサミチからの電話をきっかけに台北へ行き、街の音やシンシンとの出会いを通して心が回復していく物語です。映画を観た後に、誰かに連絡したくなったり、誰かに会いたくなったり。そんな行動につながる感情を持って帰ってもらえたら、作り手として嬉しいですね。
(Photo&text:Tomoko Takeuchi)
『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』
6 月 26 日(金)より新宿バルト9、シネスイッチ銀座ほか全国公開
出演:岸井ゆきの ツェン・ジンホア
藤原季節 中田青渚 伊勢佳世 柄本時生/ 飯田基祐
リン・チェンシー エンジェル・リー / リン・メイジェン
余貴美子
原作:吉本ばなな 「SINSIN AND THE MOUSE」(新潮社刊「ミトンとふびん」収録)
監督・脚本・編集:真壁幸紀
共同脚本:加藤法子
主題歌:藤原季節 as マサミチ「Let Me Feel You」 サウンドプロデューサー:TAKU Tanaka
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
Copyright © 2021 by Banana Yoshimoto All rights reserved.
Japanese original edition published by Shinchosha Publishing Co., Ltd., Japan in 2021.
The permission to use the original novel to produce this movie has been arranged with
Banana Yoshimoto through ZIPANGO, S.L.
©2026 映画「SINSIN AND THE MOUSE」FILM PARTNERS



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